日本企業と韓国企業、何が違うか? ~DIJセミナーに参加して~

Posted by admin on March 2, 2016

少し時間が経ってしまったが、去る218日、DJIDeutsches Institut für Japanstudien、ドイツ日本研究所)のセミナー「Meeting the Challenge of Globalization – Comparing Korean and Japanese Global Human Resource Management」に参加してきた。そこで、私が、今までの自分の考えを改めて確認できた、Prof. Martin Hemmert, Korea University)のお話を中心に記録しておく。Prof. Hemmertは、ドイツ人の経済学者だが、日本と韓国での生活&研究経験があり、現在は高麗大学で教鞭をとられている方。

彼の話を元に私が自分の考えの再確認したことは単純、「人事は同じだが、マネジメントが異なる」 日本企業と韓国企業、人事は変わらない。元々、年功序列、終身雇用的な考え方もあった中で、企業として準備されている人事制度や人事部門のあり方は似ている。国内市場サイズ、ビジネス環境、歴史(1997年の通貨危機でIMFの救済など)は異なる。何より、マネジメントが異なる。韓国は、トップダウンマネジメントであり、スピードが速く、リスクも取る。ここが日本と決定的に異なる。

もう10年近く前になるだろうか、サムスンが急速に力をつけ、世界の家電IT市場を圧倒し始めた頃に、サムスン経営研究所の方から聞いたサムスンがグローバル化で人事をどう変革したかという話を思い出した。確か、20個位の施策をどう順を追って実施されたかを伺ったが、施策や制度をリストにしてしまえば、ほぼ全て日本と同じ(多分、日本企業の部長さん方は「そんなのとっくにうちだってやってるよ」とおっしゃる内容)、唯一目新しかったのが、その後有名になったひとり発展途上国に放り出す、地域専門家制度だけだったことを思い出す。ただ、その時に思ったのは、「徹底してやっている」「凄いスピードで一気に実施している」のが日本企業とは異なると思ったことを思い出す。

今回、Prof..Hemmertの話では、当初、韓国企業は、しっかり確立したピラミッド組織で、年功序列の強い形で、マネジメントは全て韓国本社からの派遣社員で海外進出することで、進出を早急にし、本社との意思疎通も良かったが、人事的にはローカル市場にマッチせず、優秀ローカル人材をリテインすることには失敗した。そこで、欧米的な人事制度を導入し、ローカルスタッフのモチベーションアップと定着には成功したが、以前、現地と本社の制度のミスマッチは残り、依然マネジメント層には韓国人が多く、ローカルスタッフからはグラスシーリングがあるとみられている。と、日本企業の話と言っても全く違和感がない。ただ、優秀人材に特化した採用と選抜育成については、日本よりも遥かにコンペティティブでお金とエネルギーをかけている印象を持った。

人事以外の韓国マネジメント(彼の名付けた“Tiger Management”(同名の著書あり))のあり方の話になると、様相が違ってくる。戦略は“very aggressive, risk-taking business strategy”と表現されるように、貪欲に新しい技術を求め、新しい商品やサービスで、貪欲に新しい市場に進出する。とにかくスピードを重視し、何があっても〆切を守る。そのためには、方法論やパートナー選びにはとてもフレキシブル、社内リソースの活用も目標達成のためにはとてもフレキシブルに対応する。そして、何より、トップのリーダーシップが強力。多くが創業者(或は血縁)ということもあるが、カリスマという言葉の似あうトップが多く存在する。韓国の強い企業のCorporate Valueは、=Leader’s personal Valueである。非常にトップダウンが強い。戦略とリーダーシップの話は、日本と大きく異なると聴いた。

もちろん、この背景には、通貨危機でIMFが入り、パージュに近いことが起こった歴史、日本より遥かに少ない人口と市場サイズによる輸出依存(韓国の輸出はGDPの半分を超えた。日本は20%以下)、極端に低いFDI、巨大財閥の存在、徴兵制、などの環境の違いがあることは間違いないが、マネジメントに関しては学ぶものも多そうだ。