メンバーシップ型?Job型?それともアカウンタビリティ型? 働き方改革、本気で考えないとまずくないですか? (3)
(アカウンタビリティ編 & これから)
実は、私自身、このメンバーシップ型かジョブ型かの議論自体がもう古いと思っている。実は、メンバーシップ型もジョブ型も、旧来からの、人が集い役割分担の上に成り立っている“組織”が前提の考え方だ。特にジョブ型は、明確な役割責任と権限が定められたジョブという箱が存在する前提の考え方で、従来のツリー構造型組織向きだ。ところが、最近は、これはもう足枷でしかないという働き方が出てきているのではないだろうか。そもそも従来のツリー構造の組織図の書けない組織も出てきている。
社内(現在の概念で)だけみても、既に多様な契約や働き方が存在し、今後はさらに加速するだろう。週5日決まった時間に決まった仕事をする働き方、週4日勤務の働き方、時間の縛りのない働き方。決められた場所で働く、家から働く、場所は全く関係なく、ビーチから働いていてもOK。会社組織との契約、仕事単位での契約、個人からの個人への下請け契約。時間契約、仕事単位契約、成果契約。フリーランスの人は既に複数の会社と並行して契約し働いている。副業の議論もまだ盛んだが、本業あっての副業というこの考え方自体がナンセンスではないのか。数年(も多分かからない)でG5とAIが当り前のインフラになると、多くの分野では国境や国籍も関係なくなってくるだろう。多数(人数も重要ではない)の多文化国籍(これも関係ない)の人が、世界中(場所も関係ない)から参加し、24時間365日(時間とか休暇も管理するものではない)繋がりながら、ビジネスを創り上げていく。そんな時代に、メンバーシップ型とかジュブ型とかいう議論が成り立つはずがない。強いていえば、多種多様な役割や働き方を組織や個人それぞれが責任を負う、アカウンタビリティ型だろう。こう聞くと、なんだかさばさばした、味気ない人間関係を想像されているのかもしれない。それは、とんでもない間違いだ。皆、実は、このコロナ禍で、既に一端を経験しているのではないだろうか。このアカウンタビリティ型で成果を上げるには、今まで以上に、Transparency、Respect、Empathy等々が重要となる。物理的距離があるからこそ、尊重と信頼、相互理解の上での場創りが重要度を増す。働き方が変わるということは、人間関係のあり方が変わるということであり、意識の持ち方や行動も変わらなくてはならない。
こういう話をすると「いやいや、メーカーは、工場は、、、」という人も多いと思うが、その考えも捨てた方が良いかもしれない。もうかなりのモノが、データを送って3Dプリンタで打ち出せば作れる時代だ。ある意味、テレポーテーションが実現している。今でも、技術的には工場の制御の多くは自宅からだってできる。製造はリモートでは無理というのも、実は思い込みだったりしないだろうか。テスラーの時価総額がトヨタを越えたのは車が売れているからではなく、AIロボットが勝手に車を作ってくれる工場ができ、その工場自体もAIや3Dプリンタがコピーして作ってくれるようになったからだ。
VUCAの時代、来月来週のビジネスが見えないCOVID-19禍で、皆さん、毎日毎週1on1をやっている中で、何を考え、どう仕事のやり方を変えてこられているだろうか。その都度、前週のレビューをし、今週のやることや目標を話し合意し、脱線して情報交換もし、相手を気遣い、信頼関係を気付きつつ生産性を上げていく。実は人事部にいわれなくても、素晴らしいマネジメントができつつあるのではないだろうか。このマネジメントを実践できてきている時に、細かいJob Descriptionを書き契約をするジョブ型導入は、どう考えても違うだろう。もっと相手を信頼し、お互い全てをさらけ出したうえで、必要なタイミングで、必要な単位で、チームや個人が何に責任を負うかだけをお互いに確認し合いながら仕事を進めていく、そんな単純な正論から入る雇用関係を考えられないか。(ここまで書いて思ったが、実は、スタートアップ等ではかなりこういう会社出てきていますね)
今日の技術が明日陳腐化するかわからない。想像もしなかったところからディスラプターが現れて市場自体が消えてしまうかもしれない。明日突然国境の概念が消えるかもしれない。誰にも将来の環境変化が読めないVUCAの時代には、過去の成功に疑問を持つところから始めなければいけない。場所空間の概念が変わり、時間の概念が変わる。人の関係性の概念が変わり、働き方の概念だけでなく、働く目的もが変わってくる。私たちは、生きる目的や人生の目的まで変わろうとしている時代に生きている。これはデジタライゼーションによる変化の話で、COVID-19はその変化を速めただけと捉えるべきだろう。我々が直面しているデジタライゼーションによる変化は、過去の生産性の向上でしかなかった産業革命による変化の比ではない。後から振り返ると、人類が火を発見した時の変化に匹敵するのかもしれない。そんな時代と捉えるべきだろう。
過去の成功事例を持ってきて、どっちが良いかとか、生産性の議論をするのではなく、未来を想像し創造する頭の使い方が求められている。
最後は話が大きくなったが、一人ひとりが、どう生き、どう楽しみ、どう責任を負う(アカウンタビリティ)かを問われる中で、仕事はその一部でしかない。