D&I議論@日本企業
過日、ダイバーシティな(多様な属性の存在する)組織になるだけじゃダメ、インクルージョンな(多様性が真に受け入れられ、その多様性が活きている)組織にならないとダメ、ということを考えるワークショップを担当した。D&Iについて理屈をこねるのは簡単だ。しかし、実際に何がビジネスに活きるのか、その議論をする上でのビジネスとは何かまでをしっかり議論して変革を考え、行動につなげることは簡単ではないと再認識をする一日となった。
典型的な歴史ある日本の大企業では、女性、外国人、障害者、というような属性の多様化の話から入る。そして、その必要性の議論ではなく、属性の多様化をギブンとして受けた上で、どうすればよいかという議論になる。次第に、一部グループでは、属性の話ではなく、価値観の多様化の話をしなくてはいけないのではないかという議論が始まる。また他のグループでは、本当にD&Iって必要なのか、ビジネスや事業所によってD&Iの意味や意義が異なるのではないかという議論が始まる。その中で、女性活躍と言いすぎるのではないか、ビジネスの足を引っ張っていないかという議論も出てくる。実は、まだまだ、こういう意見が素直に出てくるだけでも上出来と思える会社も多い。
グループワークが一定時間でまとまってきたところで、議論の内容を発表してもらうと、結局、産休育休の話や時短など女性活躍の施策(男性は?という話は出ない)や外国人や中途社員をもっと採用すべきで、その為にどうすれば良いかという発表が多い。そこで、「なぜ、女性活躍が必要なのか?」「なぜ、中途社員が必要なのか?」「何を達成したいのか?」「本当にそれがビジネスに必要有用なのか?」「目的はCSRなのか?収益なのか?」「日本人の男性も価値観の多様化が進んでいるのではないか?それは多様化ではないのか?」等々、私から突っ込みを入れることになる。
ある総合電機製造企業で、白物家電事業部門も原子力発電事業部門も同じく女性20%という目標を目指している企業を見て違和感を感じたことがある話や、冷凍食品が一つひとつ電子レンジにかけられるパックになったのは、ひとりの女性主婦が商品開発に配属されたから、と20年ほど前にニチレイで聞いた話。ある自動車メーカーでは中途社員が増えたことで、今まで考えてもみなかったようなアプローチが出てきたり、社外を意識してヒントを得るカルチャーになったと聞いた話などを投げかける。そこでもう一度、グループで目的や本質から議論してもらう。意外と“やっぱりダイバーシティ、真の多様化が大事”という話になる。その理由はビジネス環境や顧客の多様化が進んでいて、中が多様化していないともう対応できる時代じゃない!という結論になる。
そこで、もう一度、卓袱台をひっくり返す!(笑)「そうだよね!やっぱりD&I大事だよね!でもね、多様な価値観を受け入れるってどういうこと?本当にできるの?マネジメント無茶苦茶大変だよ!大体、会社の理念やValuesに同調できない価値観の人とかどうするの?多様性を受け入れるって、そんな人まで受け入れるってこと?経営は“うちらしくない人材を採用しろ!”って言ってるらしいけど、本当にそれって正しいの?」と!
ここで、最後にもう一度議論してもらうことで、企業理念、企業バリュー、ビジネス戦略、それを達成する組織文化風土、何より皆さんが大切にしたい価値観などと、多様化の議論は切り離してはダメ!常に矛盾共戦いながら、理想を追い求めるというような議論になればしめたもの。ここまでくると、ポジティブの将来像を考えられるようになっている。
最も結束力のある組織は宗教団体だという。インド人に日本企業はインドで多様な人材(出身地、宗教宗派、階級など)を採用して経営なんか無理だと言われたことがある。表面上の言葉と数字合わせで、ダイバーシティ&インクルージュンとか言っていると、生産性が落ちるだけになりかねない。社員の皆さんが、真にD&Iが達成された楽しくやりがいのある世界をイメージできていないとダメ!