大企業で新規事業を起こすのが難しい理由(組織人事視点から)
「新規事業」という言葉をやたらと耳にする今日この頃。(昨日もランチした店で、隣の席の昭和の匂いプンプンのオジサン達がやたらと“新規事業”と言っていた)でも、エスタブリッシュド・ビジネスモデルで50年100年生きてきた大企業(これはこれで凄いこと)で、「新規事業」を起こすことって、そう簡単じゃない。と思う背景を、組織人事コンサルタントなりに大企業とスタートアップの比較視点で考えてみた。
私の結論を先に書くと、歴史ある大企業で、本気でスピード感をもって、新規事業を立ち上げたければ、組織と人事を分けないとダメ。ここでいう組織人事とは、人事制度はもちろんだが、組織風土・文化、ビジネスの進め方・プロセス、意思決定のあり方、コミュニケーションのあり方、個人の仕事に対する意識などをいっており、その為には、まず物理的な場所を分け、職場居室のスタイルを変え、服装を変え、名刺やタイトルを変え、話し方を変え、、、、実は見える形から変えた方が良いように思う。就業規則や人事制度も大幅に変える必要があるだろう。それが同じ会社で難しい場合には(別に法的にはできますよ)、法人格を変えればよい。
* 大企業は既に出来上がったモデルを生産性高くまわし、少しでも収益性を上げることが使命。結果、減点評価になるし、余計なチャレンジ(少なくとも枠をはみ出たチャレンジ)は必要ない。
スタートアップでは、前例のない新しいビジネスやモデルを創ることが生命線なので、誰もやったことのないチャレンジをすることが最も重要だし、当然、加点評価が重要になる。
これの併用は相容れず、良いところ取りは不可能。
* 元来、大企業(大きな組織)の強みはスケールメリットをとること、少品種大量生産であり、その為に組織に求められるのは、目標の共有、緻密な機能分化と緻密なプロセス管理。すなわち統制と管理。
スタートアップに求められるのは、強い思い(目標ではなくビジョン)と新しいアイデアとアジリティ。それには、自由な発想と議論の起こる場が不可欠。統制と管理は悪以外の何物でもない。
* どう工夫をしても大きな組織は遅い(と私は思う)。大企業モデルはスピードの遅れを差し引いても余りあるボリューム(含資本力)が強み。スタートアップではスピードは命。他より遅れると命取り。大企業でビジネスモデルを変えずに、いくら“スピード”と唱えても、そこはスタートアップにかなわない。
* 大企業は1を10や100にできる人を育て、重宝し、評価してきた会社。その能力を持った人が評価され、昇進する。スタートアップはゼロから1を創り出すことが求められ、そういう人が評価される。そもそも、創業者はそういう人。それがスタートアップ。人事評価の軸が根本的に違う。
* 大企業のアウトプットや活動は社会的に影響が大きい。だから慎重になる。まして、過去に失敗で社会的制裁の経験を持つと、コンプライアンスが口癖になり、石橋を叩いて渡るどころか、ずっと叩き続けるカルチャーになる。一方、スタートアップにとって社会的影響は極小で、失敗を恐れる必要がない。やり直しがきく。(もちろん創業者個人へのネガティブインパクトはある。特に日本では)石橋を叩く前に、一か八か飛び越えることだって可能。で、飛び越えた成功者が世の中を変える。
* そもそも、新規事業というのは”やりたいこと”があり、”夢”を実現するもの。決してやらせれ感でできるものではない。新規事業をやるのではなく、何かやりたいこと、創り出したいことがあり、それが結果として新規事業になるのが筋。強い思いや情熱を持てない、敷かれたレールを走るのが上手な人をアサインしては絶対に成功しない。
最後に、もう一つ付け加えると
* Equity=成功報酬が桁違い!スタートアップでは、エクイティがダイレクトに個人に跳ね返るシステムがあることにより、成功すると、大企業の報酬の何百倍何千倍にもなる。これをベースにしたモチベーションや本気の取り組み度合いも桁違いになる。また、その為には失敗を恐れない文化も醸成される。
多分、昭和の時代には、大企業もこのカルチャーがあったのでしょうね。
皆さんの会社、いかがでしょうか?