「日本人」を考える ~台風マントック(22号)体験記@香港~

投稿者 aas 日時 2018年10月1日

今回(2週間前)の香港での経験、スーパー台風マンクット(22号)による飛行機の遅延で、改めて“日本人”を考えさせられたので体験記として残しておく。ご意見歓迎。
Facebookでは報告していたが、今回、スーパー台風マンクット(あえて国際名称で呼ぶ。国際的には台風もハイケーンも名称がついており、番号で呼ぶのは日本だけ)の読み違いと元来の私の楽天性、判断の甘さから、香港に閉じ込められて一時は空港難民になりかけたが、スーパー台風に立ち向かうスーパータクシー運ちゃんがスーパー運よくつかまり、ジェットコースターを遥かに超えるスリル満点ドライブで空港ロビー宿泊は間逃れた。
14日にフィリピンで猛威を振るった台風マンクットは16日の午前から香港を暴風に巻き込み、16日午後から17日未明に香港・マカオ・広東省を直撃し、通り道に多くの爪痕を残した。
当初、私は15日に深圳から香港に移動、15日夜と16日朝、知人に会い、16日午後のフライト(ANA便)で羽田へ帰国予定だった。ただ、大型台風が向かっていたのは理解しており、14日から航空会社と確認は取っていたが、当初は、随時状況を連絡しますという回答だった。事実、15日昼頃、16日朝8時10分に前倒しして飛ばすので、6時頃に空港に来るようにと連絡がきた。同時刻、夜に約束していた知人から、17日のシンガポール仕事に間に合わすためには、今飛ばないと行けなくなる可能性があるので夕食はキャンセルと連絡があった。ここで、私は、明日の朝は早く起きてでなくちゃいけなくなったな程度の思いで、夜はひとりでのんびり中華料理を楽しんでいた。深圳は翌日16日は空港閉鎖が決まったと聞いていたのに、「まあ、香港だし、8時に飛ぶと言ってきたのでちょっと遅れても大丈夫だろう」程度の意識で、天気予報や他の航空会社のフライト状況を調べることもしていなかった。
16日、朝4:30に起きてWebを確認しても私のフライトは8:10発になっており、ホテルをチェックアウトし空港に向かい、指示通り6時に空港についた。この時点では、雨もさほど降っていない状態だった。ところが!着いたとたんに嫌な予感!まず空港がガラガラ!ゴロゴロ椅子で寝ている人たちは多数。そして、出発便の電光掲示板を見ると文字が真っ赤で、遠くから見ても明らかにほとんどがキャンセルになっているとわかった。近くに行ってみると、まあ、見事に赤字のCancelが並んでいる中、ANAとJAL便の日本各都市行きだけが、Delayとなっていた!しかし、何時発にDelayとは書かれていない。ANAに電話してみるも、どこも通じず。
この6時の時点ではWebsiteをチェックしても8:10発となっている。が雰囲気は、どう考えても飛びそうにない!(笑) ANAの担当者も不在。電話は通じず。6時過ぎに総合案内に行って調べてもらうと、私が乗るはずの機材はまだ羽田を出ていないと、、、!もう、笑うしかない!ただ、7時になるとANAの担当者が来るからそれから聞いてみろと言われ、真面目な楽天家は、素直に従って待っているものの、7時になってもカウンターは空のまま、、、。時々電話をしていると、ANA東京に通じた!で、言われたのが「すみません。明日17日の朝8:10になりました」この時点では、16日中に飛ぶとはもう思っていなかったので、ま、そんなものだろうと思い、明るく「わかりました。また明日の朝6時位に空港に来ればよいですね。お疲れ様です。」と確認し電話を切った。そして、直ぐにホテルを確保。ここまでに、空港近辺のホテルは全て満室で街中のホテルはいくらでも空いていることは確認しており、電車の便のよさそうな九龍のホテルを確保。(まだ電車で移動することを考えていた)さて今日帰れないとわかったら、急に空腹を感じ、まずは何か食べようかと考えたり、街中で買い物に出るのは難しいかもしれないから下着を空港で買っておいた方が良いかな、、、などと呑気に考えていた。実はその時点で既にシグナル8(暴風警報、全ての学校休校、オフィスや商店は閉鎖、公共交通機関停止)だったとは、全く知らず! さすがに、やっぱり早めにホテルに行った方が良いかなと呑気に考えて、電車の駅に向かうと閉鎖しているではないか!バスも動いていないとのこと!どうやって街に行けばよいのかと係員に聞くと「タクシーしかない。しかし、タクシーが来るかどうかは知らないぞ!」との回答。ここで初めて“しまった!”と自分の置かれた状況を理解する。タクシー乗り場に行くと、意外と並んでいる人は少なく30人位。しかし、少し待っていると、タクシーが全く来ていないことに気づく!その間に、暴風雨はどんどん強烈になっている!ここで初めて、“しまった!空港難民になってるんだ!”とやっと気付く!!(笑)

ここで気づいた『日本人』
*  自分の他人任せの危機管理能力の無さと性善説で他人を信じる素直さ
*  とことん最後までお客様の為にどうにかしようと努力する航空会社の美学
*  そして、結果として客も会社も会社の担当社員も、誰もが不幸になる(結果論だが)
*  多分、頑張った社員のモチベーションにはマイナスで、会社のコストにも大きく影響
*  サービス水準ランキングが高く、収益性が低い、日本企業らしさ!

ま、ジタバタしても仕方ない、いざとなればここで明日まで過ごすしかないじゃん!と意外と平静に落ち着く。が、気が付くと、どんどんタクシーの待列が短くなっている。実は近所なら行くというタクシーが来て、それに乗る地元民が若干いるものの、実は、多くの人たちが諦めて(じゃあ、どこに行っていたかは不明)列から離れていることに気づく。そうこうしていると、気づくと列の一番前!(笑) ただ、私の理解では、私が並んでから市内に向かってくれるタクシーは一台も来ておらず!(笑)
すると整理係のオジサンが、「おい!タクシーが来たぞ!」「ウソ!!」「とりあえず、早く乗れ!行ってくれるって!その代わり、通常の金額の倍くらい払うんだぞ!」というような会話だっただろうか!金額なんてどうでもよい!(笑) とにかく、タクシーに乗った!タクシーのオジサンは英語できず。身振り手振りでやり取りするが、とにかく行くぞ!という感じで空港を出る。
ここで改めて置かれている状況に気づく。とんでもない暴風雨!一歩外に出ると、嘘だろ!本当に街まで行けるのか?という不安に駆られる。が、そこは空港まで来て商売しようというタクシーの運ちゃん!飛ばす跳ばす!真横から吹き付ける暴風雨の中を100kmでぶっ飛ばす!周りには全く車はおらず!九龍まで同じ方向に走る車とは一台も行き会わず!反対車線ですれ違ったのが20台位だっただろうか。その間、本当に、繰り返すが本当に!根元から引っこ抜かれた大きな木が、我々の目の前を真横に飛んで横切った!後から考えると背筋が、、、。その後、突然オジサンが暴風雨の中で急ブレーキを踏んだ(これも十分怖かった!)、何事かと思ったら、目の前の道が倒れた大木で完全にふさがれており、高速を逆走する(少し戻って別の道へ)という荒業!(笑)まあ、とにかく、遊園地では絶対に経験できないスリルを味わいました!(笑)
さて、翌日、今度は4時に起きて、同じように空港に6時前に到着。既に、この時点で、私の中では8:10に飛ぶというのは半信半疑。案の定、ついてしばらくすると、10:20になりましたと掲示。そしてその少し後、6:45位には22:30との修正掲示。(笑) 後から冷静になって気付いたことだが、他の会社は前日の全便をキャンセルしており、当日は全ての便が予定通り運行されている中で、前日便を“遅延”にしてきたJALとANAだけが、通常スケジュールの中に前日便を一所懸命突っ込んでくれていたのですね!本当、この努力は凄い!(でも、他の会社便も同じことをしだすと、当然滑走路はパンクするので強制的にキャンセルになるでしょうね)
さてさて、そこで何が起こったか。ご丁寧なANAは(多分、JALも同じでしょう)、日本語と英語の予定を張り出すと共に、日本人グランドスタッフがカウンターの外に出てきて説明対応を始めてしまった!(やらざるを得なくなった!)お察しの通り、日本人がそこに殺到し、おじさんは「帰らないと仕事があるんだよ。朝飛ぶって言ったじゃないか!」おばさんは「朝早く起きてくる必要なかったじゃない。ホテルの朝ごはんも食べずに来たのに!」正直、しるか!である。お分かりの通り、他の航空会社の前日便は全てキャンセルになり、乗客はそれぞれ一所懸命別の便の予約を取ろうと試行錯誤し、人によっては何日も足止めを食らう人がいるだろう時に(事実そういう人たちはいた)、前日便を遅延のままで一所懸命、出来るだけ早く飛ばそうとしている会社の現場スタッフに詰め寄っている日本人(乗客)。その人達ひとり一人に一所懸命対応している日本人(航空会社スタッフ)。明らかに、そこだけが異空間だった。

ここで気づいた『日本人』
*  まあ自分勝手というか、自己責任感の無いこと!
*  まあ、でも、これだけ手取り足取りやってくれれば、自己責任感はつかないわな!

小沢一郎氏の「日本改造計画」の書き出しに「グランドキャニオンでは断崖絶壁の上にも柵が無い」という一節があったことを思い出しつつ、気が付くと「飛ばしてもらえるだけでもありがたいと思えないかなぁ!」と大声で言っているオジサン(私です(笑))は、皆さんに無視されて、「さあ、一日、美味しいもの沢山食べて帰ろ!」と街に戻ったのでした。結局、飛行機は、日付変わって24:45頃に飛んだ。航空会社の皆さま、お疲れさまでした。

(追記)
こんなやさしい国?で、「国として一番大切なことは国民の命を守ること」とか言いつつ、「民主主義国家だから、“避難警告”は出せない」とか言っている。これって、どう考えても矛盾している気がするのは私だけでしょうか?