ATD2017 ICEに参加して
Atlantaで開催されたATD2017インターナショナルコンファレンスに参加してきた。昨年のDenverに続いての参加だったが、かなりHot Topicの内容は変わっていたように思う。約400のセッションから自分で選んで出席できるのは、フルに出ても18セッションなので、それで全体傾向をいえるわけではないが、それでも、今回は、Micro LearningとNeuroscienceという言葉をよく耳にしたと思う。共に昨年から聞かれた言葉だが、より浸透し、進化していたように思う。が、日本では、まだほとんど聞かれないのではないだろうか。
まず、Micro Learningだが、ATD会長のTonyの基調講演のテーマにもなっていたが、e-Learning →Mobile Learning → Micro Learningと、Technologyを活用したLearningがかなりのスピードで変わってきている。今まで言われてきた、OJT、教育研修、さらには部下育成という概念すら変わってきているように思われる。TeachingやTrainingという二人称(教える側が主語だった)が、Learningという一人称(学ぶ側が主語)になって久しいが、VUCAと言われる先が見えず変化の激しい時代、技術の進歩により変化のスピードも今までとは比でない速さになった時代、そして情報収集や学びの概念も異なっているミレニアムが主役になった時代、何が人を成長させ、どうすれば業績が上がるかをも根本から見直す必要があるようだ。必要な時、思った時に、短時間で必要なことを画像で学び、即実践に活用できるMicro Learningが、時代にニーズにマッチしてきたということだろう。あるセッションに出た時には、「本当に日本では、Short Videoを使ったMicro Learningはポピュラーではないのか?」と驚かれた。
今回ATDに出ていて改めて思い知らされたことがある。このMicro Learningの普及にしても、20万円を払って10000人が参加するコンファレンスの存在そのものにしても、個々人が自分の能力向上のため、キャリア開発のため、個が“貪欲に学習したい”という思いを持っているから成立しているということ。これを強く感じた。個が自身のために能動的に行動するのではなく、研修も会社からやらされている、キャリアも会社任せの日本では成立しないのだろう。以前、イギリス人の著名コンサルタントに「タダで参加できるコンファレンスやセミナーが主流になった日本では、個人も業界も成長しない」と警告されたことを思い出した。
Expoへの参加企業でも、Mobile LearningやMicro Learningのプラットフォームやコンテンツ提供の会社が圧倒的に増えた。それが当り前というか、Micro Learningを取り入れていない企業は、明らかに遅れていると思わせられる展示内容だった。スーツでバリっと決めたベテラン紳士が“我々頭良いですよ”オーラを出しているブースよりも、以下にもITオタクの若者がTシャツでゲーム感覚で説明し笑いも起こるブースの方が人は集まっていた。明らかにパラダイムシフトが起こっている。Learningの世界も明らかに第四次産業革命に来ており、Big Data AnalysisとAIが本格化する来年あたりからは、また全く違う世界が見られると強く感じた。明らかに、日本は遅れている。
そして、Neuroscience。日本語にすると脳科学だが、こちらは、昨年までの堅苦しい科学的応用の解説から、もっとソフトな「当たり前のことを当たり前にやろうよ」という印象に代わっていたように思う。ただ、その背景には、しっかりと人の脳の特性(脳科学)、行動の本質(行動科学)に沿った能力開発や組織行動の考えが存在している。科学の進歩により、今まで何となく言われていたこと、経験からの感で語られていたことの裏付けが進んで、方法論が開発され、あるいは修正が行われているイメージだった。今回のKeynote Speakerのひとり、スタンフォード大学の心理学者、Kerry McGonical教授の人のStressがどのようにPositive Energyに変えられるかという話もそのひとつだった。
最後に、もう一つ印象に残った言葉を記しておく。「人と場を創るのに、もうROIを考える時代ではない!」