井村監督と宇津木監督からの学び
昨秋、オリンピックに9度監督として出場し(2度は中国の監督として)、9度ともメダルをとられている井村雅代氏の講演を聞き、昨夜はソフトボール元全日本チーム監督(シドニーで銀、アテネで銅)、宇津木妙子氏の講演を聞いてきました。当初、同じようなイメージの方かなと勝手に思っていましたが、お話を伺っての第一印象は、お二人、全く違うぞ!でした。お二人とも怖い監督であることには変わりないのでしょうが(笑)、井村さんはポジティブ&グローバル、宇津木さんはコンプレックスから上り詰めるドメスティック、というのが第一印象でした。ただ、井村さんの講演はビジネスパーソン相手の講演であり、昨夜の宇津木さんの講演は一般講演で多くのアスリートや各種スポーツの指導者が来られているような場だったので、話される内容や話し方が違ったのかもしれません。
ただ、これは第一印象で、後から考えると、2つほど考えたことがありました。
一つは、やっぱり共通点!冷静に考えると、当たり前だし、ビジネスの場でも全く同じように当てはまることを、如何に徹底してやりきるか!①共有できる目的意識を持ち、明確なゴールを設定する、②現状を冷静に分析・理解し、③しっかりと戦略を立て、④ゴールを達成するための戦術を詳細に立て、⑤それを徹底してやりきる!ってことですね。特に、私が驚いたのは、お二人とも戦術のところが、選手個人に合わせ、状況に合わせ、驚くほど詳細かつ繊細に対応されてきたということです。選手個々人の体調や性格を把握したうえで、しっかりと個人ごとの対応をれえている。多分、青山学院の原監督も、甲子園優勝監督も同じでしょう。一方、ビジネスの世界でそこまで対応のとれているリーダーはどのくらいいるのでしょうか?スタッフの志向や意思を理解もせず、目標設定を上から与えて“やれっ!”って言っているだけでは、高い目標の達成は難しいですよね。
もうひとつは、シンクロナイズドスイミングは全員が同じ高いレベルで揃うことが重要な競技であるのに対し、ソフトボールは結局のところエースピッチャーが中心で(宇津木監督もはっきりとおっしゃっていました)、役割の異なる個性の集まる競技です。従って、井村さんは全メンバーを同じペースで引き上げる必要があり、いかに揃えるか、それを仕上げるのが監督の役割。とは言え、極端に異なり、チームの輪を乱すものは排除することもやむを得ない。対して、宇津木さん曰く、全日本クラスになると監督にも反抗してくる我儘で変人(=強い個を持った選手)の集まりであり、そのような変人を集めて個性を伸ばしつつ、どうにかまとめあげていくのが監督の役割。会社でも、しっかりと決められた役割をこなすことが最も重要な事務や製造などのマニュアル業務部署のマネジメントと、個を如何に伸ばし、それらの化学反応を引き出すかという研究開発や企画業務部署のマネジメントは異なるはずでしょう。もうちょっと、突っ込んで考えてみる余地はありそうです。
ところで、お二人とも、なぜ金メダルが取れなかったかという、ネットには書かないでよ的裏話もしっかりあり、楽しくも色々と考えさせられるお話でした。