仕事も人生も「思い」から

Posted by admin on January 16, 2016

結局、成功するのも、後から後悔しないのも、何より遣り甲斐を感じ充実するのは、強い「思い」を持ち、ベストを尽くした時。スポーツや音楽で経験した人も多いのでは。仕事も人生も一緒。理屈じゃない。今年の正月三が日、雑誌原稿の執筆と執筆予定本の構想しながら、妄想、たどり着いた当り前の答。

昨年1年間、人事専門誌「人事実務」でインタビューシリーズを持たせていただき、元気で強い企業の人事担当役員や専門家らにお話を伺った。今年の正月はその〆の原稿を書きつつ、このシリーズの内容が濃いので本に纏めようという企画があり、その本の構想に時間を使った。

11回のインタビューでは、色々な経験談、制度、施策や方法論なども伺ったが、結局、成功の鍵であり、強さの源泉は、そんなものではなかった。インタビューで出てきた言葉を使うと、成功の鍵は、「志」「信念」「本気度」「思い」、、、。以前、Canonが2万人以上の社員全員に新評価制度研修を1泊2日で行ったことがあった。それに対し、ある企業の経営者が「そこまで時間とお金を使ってROI取れますか?」と質問をされた時、御手洗社長は「ROIを考えるならやらない方がよい」と答えられたと聞いた。今回、ファストリテーリングでは「"日本初の世界一を目指す”というビジョンがクリアで、それが本気だと社員に伝わっている」という話が出た。これはトップアスリートがオリンピックで金メダルを目指すというのと何ら変わらない。

個人でも同じではないのか。こんなコマーシャルがあった。野球を頑張っている小学生の子供がお父さんに「僕、イチローみたいになれるかな?」と聞くと、父は「なろうと思ってなれるものじゃないよ。でもな、なろうと思わないと何にもなれないよ」と答える。そのイチロー選手は小学校の作文で「僕の夢は一流のプロ野球選手になることです。ドラフト入団で、契約金や一億円以上」と書いている。サッカーの本田選手は「ぼくは大人になったら、世界一のサッカー選手になりたいと言うよりなる」と書いているのも有名な話だ。これだけ強い「思い」が持てる人は幸せだ。しかし、もっと小さいところでは、皆、夢や目標はあるはずだ。何をしたいか。どうなりたいか。どんな人生を送りたいか。時々考えてみたい。そして、その「思い」を少しづつでも強くすることが(思いが強くなると行動にも表れるはず)、人生の充実に繋がるのではないだろうか。

社長がこのくらい強い「思い」を持っている企業は強い。もちろん、社員がそれを受け、同じくらい強い思いで取り組むというのは理想だ。しかし、それは並大抵ではない。その役割を担うのが各部門のトップであり、それを担うスタッフが人事部門だろう。当然、同じ強い「思い」を持ち、どう実現するかを考え実践することが求められるのだが、本当にそんなことができるのだろうか?社長がよく「社員全員が社長と同じ意識で行動してほしい」とか言われるが、本当にそんなことが可能なのか。アスリートが金メダルを取りに行く時、選手はもちろんコーチやサポートスタッフ全員が同じ思いで一体化していないとメダルには届かない。会社で本当にそんなことが実現可能なのだろうか。少人数で会社を立ち上げて、同じ思いで、同じ夢に向かって、必死になっている時はその状態なのだろう。全員が昼夜関係なくビジネスのことを考え、会社に寝泊まりもするような状態かもしれない。

と書いてくると、昨今、皆が合唱している、ワークライフバランスやダイバーシティ&インクルージョンって何だろうかという疑問も出てくる。これらの実現も、それが会社業績の向上に繋がる或は会社の理念や哲学として絶対にそうすべきだという強い「思い」がないと実現できないだろう。どこかで、ワークライフバランスなんて言っていると業績が低下するかもしれないが世の中の流れだから仕方がない、などと思っているとどんな制度を作っても本当に定着することはないだろう。社長自身がワークライフバランスを実践している企業がどのくらいあるだろうか?ダメだといっているのではない。本気か?という話と、本当に全社員に同じことを求めるのか?という疑問だ。(昨年、Facebookのザッカ―バーグが2か月の育休をとったことが大きな話題になった) 先日、子供3人を東大理Ⅲに入れたお母さんの受験に必要な勉強にだけ時間を使わせる合理的教育法がネット炎上とか議論になっていたが、私は議論自体がナンセンスだと思った。スポーツでトップを目指すアスリートは、家族旅行はもちろん、勉強や遊びを全て犠牲にしているではないか。東大目指すために他を犠牲にして何が悪いのか?それが良いかどうかはそれぞれの価値観の問題で、他人がとやかく言うことではないだろう。お互いにどうすべきかと思うかという自分の考えを押し付け合って議論している、ダイバーシティを理解できない国の典型的現象だと思った。そう考えると、やはり社長の「思い」を全社員が同じレベルで共有するというのは、とてつもなく難しい要求かもしれない。しかし、社長の「思い」を理解することはできるはずで、そこは会社としてもとことん努力をすべきだろう。

何だか途中からちょっと脱線したが、要するに、本当にやりたいこと、やるべきだと思っていること、そういう「真の思い」がないと、長続きもしないし、成功もしないと、改めて思った2016年の第一週だった。